BENRY[ベンリ―]

法学の予習ノート

補強証拠

補強法則

 自白だけでは有罪にすることができない。

 自白が完全に任意になされるのであれば、補強法則はいらないようにも考えられる。しかし、戦前、自白だけで処罰できるとしていた頃には、拷問を誘発した。すなわち、自白は完全に任意にされるわけではなく、往々にして任意性に疑いのある自白がなされ、それにより誤った判断をしてしまうおそれがあることから、補強法則が存在している。

 捜査機関の自白の強要がないとしても、犯人の蔵匿のために故意に虚偽の自白をする可能性もある。

 また、公判廷で自白している場合に、強要がないとしても、故意に虚偽の自白をする可能性があるのは同様である。

 

 自白以外の裏付け証拠について、証拠能力が認められなかった場合に問題となる。

 

自白の証拠能力

柔道

 自白の任意性がない以上、証拠とすることができない。

 自白法則の根拠には、①319条1項に規定する自白は、虚偽のおそれが大きいから排除される(虚偽排除説)、②黙秘権の侵害を防止するために排除される(人権擁護説)、③自白採取手続の適法性を担保するために排除される(違法排除説)の3つがあるが、虚偽排除説を中心に、違法排除説と二元的に用いるべきである

 弁護人が自白調書には証拠能力がないと主張した場合、まず、伝聞法則から伝聞性を判断し、そして伝聞性を満たす場合には伝聞例外に当たらないかを検討する。

 その上で、自白法則から証拠を排除すべきか否か、虚偽排除・違法排除説二元論の観点から判断する

 自白に至る経緯については、補助事実(間接事実?)であるから、裁判所としては自らの心証によって判断してよい。

 もし、無理矢理とられた自白に基いて、真実であるということが証明された場合には、虚偽排除の観点からは自白を排除すべき必要性は低下することになる。もっとも、違法排除の観点から、憲法や刑事訴訟法の所期する基本原則を没却するような重大な違法で、将来の違法捜査抑止の観点から排除すべきである場合には、証拠能力はないものとして扱われることになる

アル中

 供述したのは禁断症状が収まってからであるから、柔道の場合とは異なる。

 もっとも、約束による自白の問題がある。

 約束による自白は、①利益供与の主体の権限、②供与する利益の内容、③利益供与の意図・方法、④提示された利益の受け止め方、⑤身体的・精神的状況から判断する。

 もっとも、本件において供与する利益の内容というのは、内妻Aからの手当や介護であってそこまで重大な利益というわけではなく、また、利益供与も被疑者が自ら申し出たものであるから、その方法が不相当ともいえない。したがって、虚偽排除説からしても、証拠能力は認められるべきである。

接見交通

 Xは通常の取調の中で供述しているのであるから、それ自体任意性に疑いのあるものではなく、虚偽排除説からは排除されない。

 しかし、弁護人の接見交通権を侵害した違法及び、被疑者の弁護人選任権(憲法37条3項、刑訴法30条)を侵害することについて、違法性があるものと考えられ、その違法性が証拠を排除すべきほどの程度かどうかによる。

 検察官の反論としては、現に取調中(捜査中)であって接見指定が出されていたはずの事案であるから、違法性は小さいと反論することが考えられる。

最判昭和45.11.25

 「被疑者を〜いうまでもない」それが直ちに違法であるということまではいっていない。訓示的。

 本件では、自ら自白することで、妻が処罰を逃れられるかもと考える可能性があった。これにより、心理的強制を受けているものといえる。

 もし妻が本当に自白していた場合でも、被告人の心理状態としては変わるところがない。そうであるとすれば、本件においては、偽計による自白が任意性を否定するものとは考えにくい。

 田宮先生の意見は、本件は違法排除について実質的に判断した上で、自白の任意性についての伝統的なタームである任意性の観点から形式的に判示したものとする。ただし、虚偽排除説からは、偽計があろうとなかろうと虚偽の自白に向けた心理的強制はあったのであり、いずれにしても任意性に疑いのある事案であった。従って、あえて違法性排除説から説明する必要があるとすれば、それは、本件のように共犯者の自白について偽計をせず、それによって心理的強制を加えて自白を得たとしても、証拠能力を肯定する場合のみである。

 松尾先生の意見は、あくまでも虚偽排除で読んでいる。その理由付けとして、偽計の使用については、オビタ・ディクティムにすぎないからとする(事案については虚偽だけを考えているとする)。しかし、果たして偽計の使用について述べた規範の部分は、オビタ・ディクティムなのか。規範として述べている以上、これは、レイシオ・デシデンダイであるのではないかと思われる。

挙証責任と推定

嘱託殺人

 犯人性について、合理的な疑いを超える程度の証明がなされていない以上、Xに対して有罪判決を下すことはできない

挙証責任の所在

 殺意をもって、人を殺したという殺人罪の構成要件については証明されているものと考えられ、通常の殺人罪で有罪判決を下すことができるのでは?とも思うが、「疑わしきは被告人の利益に」という利益原則からしたら、嘱託殺人ではないということまで、検察官が立証責任を負うとして、殺人罪の判決を下すことができないものと考えられる。

 他方、嘱託があったことについては合理的な疑いを超える程度の証明はされていないが、上記の利益原則により、嘱託殺人についての判決を下すことはできる

間接事実と直接事実

被告人に愛児がいた可能性が高いこと、被害者から暴力を受けていた可能性が高いことというのは、殺意の存在という直接事実を証明するための間接事実にすぎないため、自由心証主義が妥当する。したがって、考慮することができる

正当防衛

 構成要件該当性が認められれば、原則として違法性があると考えられるものの、正当防衛という違法性阻却事由が主張されている。この場合、正当防衛という争点が顕在化している以上、検察官が正当防衛ではないことについての立証責任を負う。従って、正当防衛ではないことを証明できていない以上、有罪判決をすることはできない

債権譲渡

債権者代位権・債権執行・債権譲渡の比較

・Bが無資力の場合には債権者代位権を使える。もちろん債権執行もできる(転付命令は略)。この場合、あえて譲渡を受けなくても、債権者代位権でCに対して請求できるため、必ずしも応じる必要はない。なぜならば、譲渡を受けるとBに対する債権が消滅してしまうから。他方で、Dによる転付命令の申立てでBC債権について代位行使できなくなるおそれも考えると、応じるメリットもある

・Bが無資力でない場合には債権執行しかできない(転付命令は略)。この場合、有資力のBから回収できる地位を失うという点で、債権譲渡にはデメリットがある。Cの状況次第か。

譲渡禁止特約

 判例は、転付命令は有効とする(最判昭45.4.10)

到達時説

 到達時がDの方が早いため対抗できない

債権譲渡と抗弁の帰趨

 新法では、異議なき承諾による抗弁の切断の規定は削除された。

(1)2月15日に、Aは対抗要件を備えているが、既に対抗要件具備前である1月15日にCがBに弁済をしている以上、この抗弁をAに主張することができる。譲渡通知の場合も同様。

(2)発生原因が公序良俗違反の債権であり、このことはAに主張することができるから、支払を受けることはできない

(3)CのAに対する異議なき承諾は、2月15日であり、Dの対抗要件具備よりも後である。従って、Cに支払請求はできるものの、拒まれる。ただ、信義則違反(禁反言)により、Cの拒否が制限される可能性も。

(4)

 既に履行期が経過している場合。

 解除は、形成権であり、その行使自体は対抗要件具備後の事情である。しかし、請負契約は完成品の引渡しと引き換えに代金を支払うべき契約であり、債権譲渡前の契約時に反対給付の履行義務が生じているから、契約自体が「譲渡人に対して生じた事由」(468条1項)に当たる。したがって、Aに対して主張することができるため、支払に応じなくてよい。

 まだ履行期が到来していない場合。

 まだ解除はできないため、仕事が完成しているのであれば、請求に応じなければならない。もっとも、本件では仕事が完成していないため、請求自体を同時履行の抗弁により拒むことができる。

社債、社債管理者、社債権者集会、新株予約権付社債等

236条1項2号の払込みと、238条1項3号の払込みの違い

第二百三十六条 株式会社が新株予約権を発行するときは、次に掲げる事項を当該新株予約権の内容としなければならない。
一 当該新株予約権の目的である株式の数(種類株式発行会社にあっては、株式の種類及び種類ごとの数)又はその数の算定方法
二 当該新株予約権の行使に際して出資される財産の価額又はその算定方法

第二百三十八条 株式会社は、その発行する新株予約権を引き受ける者の募集をしようとするときは、その都度、募集新株予約権(当該募集に応じて当該新株予約権の引受けの申込みをした者に対して割り当てる新株予約権をいう。以下この章において同じ。)について次に掲げる事項(以下この節において「募集事項」という。)を定めなければならない。
一 募集新株予約権の内容及び数
二 募集新株予約権と引換えに金銭の払込みを要しないこととする場合には、その旨
三 前号に規定する場合以外の場合には、募集新株予約権の払込金額(募集新株予約権一個と引換えに払い込む金銭の額をいう。以下この章において同じ。)又はその算定方法

236条1項7号の取得条項

七 当該新株予約権について、当該株式会社が一定の事由が生じたことを条件としてこれを取得することができることとするときは、次に掲げる事項
イ 一定の事由が生じた日に当該株式会社がその新株予約権を取得する旨及びその事由
ロ 当該株式会社が別に定める日が到来することをもってイの事由とするときは、その旨
ハ イの事由が生じた日にイの新株予約権の一部を取得することとするときは、その旨及び取得する新株予約権の一部の決定の方法
ニ イの新株予約権を取得するのと引換えに当該新株予約権の新株予約権者に対して当該株式会社の株式を交付するときは、当該株式の数(種類株式発行会社にあっては、株式の種類及び種類ごとの数)又はその算定方法
ホ イの新株予約権を取得するのと引換えに当該新株予約権の新株予約権者に対して当該株式会社の社債(新株予約権付社債についてのものを除く。)を交付するときは、当該社債の種類及び種類ごとの各社債の金額の合計額又はその算定方法
ヘ イの新株予約権を取得するのと引換えに当該新株予約権の新株予約権者に対して当該株式会社の他の新株予約権(新株予約権付社債に付されたものを除く。)を交付するときは、当該他の新株予約権の内容及び数又はその算定方法
ト イの新株予約権を取得するのと引換えに当該新株予約権の新株予約権者に対して当該株式会社の新株予約権付社債を交付するときは、当該新株予約権付社債についてのホに規定する事項及び当該新株予約権付社債に付された新株予約権についてのヘに規定する事項
チ イの新株予約権を取得するのと引換えに当該新株予約権の新株予約権者に対して当該株式会社の株式等以外の財産を交付するときは、当該財産の内容及び数若しくは額又はこれらの算定方法

新株予約権の利用方法

 役員のインセンティブ報酬

 新株予約権付社債(2条22号)

 ライツ・オファリング(新株予約権無償割当て)

 業務提携

募集手続(238条以下)と新株予約権無償割当て(277条以下)による場合との異同

 公開会社ではいずれも取締役会決議。

 非公開会社では、株主総会だが、募集手続の場合は特別決議であり(238条2項、241条3項4号、309条2項6号)、新株予約権無償割当ての場合は普通決議である(278条3項)

(新株予約権無償割当て)
第二百七十七条 株式会社は、株主(種類株式発行会社にあっては、ある種類の種類株主)に対して新たに払込みをさせないで当該株式会社の新株予約権の割当て(以下この節において「新株予約権無償割当て」という。)をすることができる。


(新株予約権無償割当てに関する事項の決定)
第二百七十八条 株式会社は、新株予約権無償割当てをしようとするときは、その都度、次に掲げる事項を定めなければならない。
一 株主に割り当てる新株予約権の内容及び数又はその算定方法
二 前号の新株予約権が新株予約権付社債に付されたものであるときは、当該新株予約権付社債についての社債の種類及び各社債の金額の合計額又はその算定方法
三 当該新株予約権無償割当てがその効力を生ずる日
四 株式会社が種類株式発行会社である場合には、当該新株予約権無償割当てを受ける株主の有する株式の種類
2 前項第一号及び第二号に掲げる事項についての定めは、当該株式会社以外の株主(種類株式発行会社にあっては、同項第四号の種類の種類株主)の有する株式(種類株式発行会社にあっては、同項第四号の種類の株式)の数に応じて同項第一号の新株予約権及び同項第二号の社債を割り当てることを内容とするものでなければならない。
3 第一項各号に掲げる事項の決定は、株主総会(取締役会設置会社にあっては、取締役会)の決議によらなければならない。ただし、定款に別段の定めがある場合は、この限りでない。


(新株予約権無償割当ての効力の発生等)
第二百七十九条 前条第一項第一号の新株予約権の割当てを受けた株主は、同項第三号の日に、同項第一号の新株予約権の新株予約権者(同項第二号に規定する場合にあっては、同項第一号の新株予約権の新株予約権者及び同項第二号の社債の社債権者)となる。
2 株式会社は、前条第一項第三号の日後遅滞なく、株主(種類株式発行会社にあっては、同項第四号の種類の種類株主)及びその登録株式質権者に対し、当該株主が割当てを受けた新株予約権の内容及び数(同項第二号に規定する場合にあっては、当該株主が割当てを受けた社債の種類及び各社債の金額の合計額を含む。)を通知しなければならない。
3 前項の規定による通知がされた場合において、前条第一項第一号の新株予約権についての第二百三十六条第一項第四号の期間の末日が当該通知の日から二週間を経過する日前に到来するときは、同号の期間は、当該通知の日から二週間を経過する日まで延長されたものとみなす。

新株予約権の有利発行の判断

東京地決平成18.6.30(62)

 公正なオプション価格とを比較し、それを大きく下回る場合は有利発行となる

インセンティブ報酬として新株予約権を付与する場合の手続

 新株予約権は、公開会社であれば有利発行の場合に株主総会の特別決議が必要だし、非公開会社でも株主総会での説明が要求される(238条3項)が、

報酬として発行される場合には、金銭の払込を要しないこととして発行する場合であっても、有利発行としての株主総会の決議は要しない(238条3項1号反対解釈)

担保付社債と振替社債

担保付社債→担保付社債信託法

振替社債→振替法

社債管理者設置の強制

田中p.529

 原則は設置が強制される(702条本文)

 しかし、

①各社債の金額が1億円以上である場合、

又は

②ある種類の社債の総額を当該種類の各社債の金額の最低額で除して得た数が50人を下回る場合(当該種類の社債の社債権者が50人以上とならない場合)

には免除される(702条ただし書き、規則169条)

 

①は、1億円以上の債権者であれば自らの権利は自ら保全・実行できると考えられるから

②は、当該種類の社債の発行が多数の投資者の利害に影響を与えないから

社債管理者の義務

 公平誠実義務(704条1項)

 善管注意義務(704条2項)

社債権者集会制度の趣旨

 社債の償還が危ぶまれる場合に、社債全部について猶予や減免をすれば、すべての社債権者にとって有利となる可能性があるから。

 フリーライドの防止をしつつ、社債権者の権利の変更をする