BENRY[ベンリ―]

法学の予習ノート

優先席

優先席の法的性質

 一般に、優先席とは、高齢者・障害者・けが人・体調不良者・妊婦等(以下、高齢者等という)の使用を優先することを求めた座席のことをいうと解されるが、その定義は不明確。旅客運送約款で定義されていれば、明確になる。

 車両の所有者である鉄道会社等が、その管理権に基いて設定。

 一般に、健常者が使用することも認められるが、乗客のうち高齢者等が座ることのできる座席が存在しないとき、優先席に座っている健常者は、当該高齢者等に優先席を譲ることを求められる。

 優先席を高齢者等に譲ることを求められる根拠は、一般には、慣習・条理による。現代社会において、優先席を譲らなければならないとする法律はないし、また、一般的には旅客会社と乗客との間の運送契約の中にも、優先席を高齢者等に必ず譲るべき合意はないものと考えられる(もしかしたら、旅客運送約款にそのような義務が定められているかも)。

 ただし、運送契約の中には、乗客は、鉄道会社の従業員(駅員・車掌等)の指示に合理的な範囲内で従うべき旨の合意が含まれているとも考えられる。

 

 そこで、健常者Aが、満席の電車の優先席に座っていたところ、高齢者等Bが新たに乗客として車両に乗ってきた場面を想定する。

 このとき、そもそも、健常者Aには、法律又は契約に基づいて高齢者等に優先席を譲らなければならないという法律上の義務は存在していない。

 ※ただし、優先席について、運送会社が「この座席は、高齢者・障害者・けが人・体調不良者・妊婦しか座ることができません」と注記しておいた場合は話が変わる。

 このことから、高齢者等Bが健常者Aに対し席を譲るように要求した場合であっても、それに従う法律上の義務はない。慣習・条理の観点から要求することができるだけである。

 ただし、高齢者等Bは、電車を運営する鉄道会社に対しては、自分が優先席に座るための措置を求めることができるのではないか。というのも、運送契約が準委任契約が請負契約かが明らかではないが、準委任契約に該当するとすれば、債務者である鉄道会社は善管注意義務を負っていて、債権者である客を安全に目的地まで運送する義務を負っているものと考えられるし、請負契約に該当するとすれば、鉄道会社は、客を安全に目的地まで運送するという仕事の完成を求めることができるからである。

※旅客運送契約は商法777条〜787条までに規定があるため、純粋な民法上の準委任・請負ではない。

 このことから、高齢者B等の求めがなくとも、鉄道会社の従業員は自発的に、健常者Aに対して席を譲るように求めることもあるだろう。鉄道会社の従業員から席を譲ることを求められた健常者Aは、席を譲らなければならない。というのも、運送契約の中には、鉄道会社の従業員(駅員・車掌等)の指示に合理的な範囲内で乗客が従うべき旨の合意(鉄道会社の従業員の求めに応じて、電車内の設備を利用すべき旨の合意)が含まれているとも考えられるからである。 

優先席に座った健常者の占有権(占有訴権)

 優先席に座った健常者のところに、高齢者等が訪れて席を譲ることを求められた場合、占有権を主張して断ることができるか。

 →そもそも占有権を主張できる場面か微妙(「優先席」という特殊性)。

※占有権制度の趣旨は、①社会秩序の維持、②本件保護、③債権的利用者保護。

その他

 法は、社会秩序を維持し、文化的な生活をするために、共同体の構成員が従うべき規範。生まれながらに権利・自由を有する者同士のコンフリクトを解消するためのルール。

 

 例1 法律は、国家が、主権に基いて国を統治するためのもの。

 例2 条約は、国家間での合意。

 

 法は、包括的に規定される。

 そのため、個別具体的な事案に、法律をあてはめるためには、法を解釈し、その内容を明らかにすることが必要。

 

 法は、あくまでも倫理の一部であることから、法だけに従えばいいという考え方はおかしい。法的に問題がなくとも、倫理に反する行為は行うべきではない。したがって、「法=倫理」となるほど両者が接近しすぎるのは好ましくない。そのことは、逆に、日常生活におけるすべての事象を法に定めなければならない状況を生み出し、人々の行動の自由の制約に繋がる。

 倫理というのは、時代によって変化し、また、同時代であっても、人によって何が倫理であるかという考えは一致しない、極めて動的なものである。したがって、法解釈の際に倫理だけによっていたのでは、統一的な規範形成が困難となるおそれがある。