BENRY[ベンリ―]

法学の予習ノート

刑法導入部

刑法の基本

応報刑論

 古典学派は、人間の自由意思を認め(非決定論・自由意志論)、自由意思の発現としての客観的な行為及び結果に着目し(行為主義・客観主義)、その犯罪的意思に対し道義的な非難としての責任を問えるとする(意思責任論・道義的責任論)。この責任を問うために行為に対する応報として加えられるのが刑罰であり、その内容は苦痛と解している(応報刑論)。

 純粋な応報刑論からは、「地球最後の日であっても、殺人犯人の死刑を執行する必要がある」という理解は正当化されうる。

目的刑論

 近代学派は、自由意思を否定し犯罪は何らかの原因に基づくと解し(決定論)、犯罪の原因として行為者の性格の社会的危険性(悪性)に着目し(行為者主義・主観主義)その性格の危険性を除去し犯罪を防止する必要がある以上、危険な性格を持つ者は、社会から防衛の処分を受けるべき地位に立つとする(性格責任論・社会的責任論)。そして、刑罰は犯人を改善することによって再犯を防止する特別予防を主たる目的とする(目的刑論・改善刑論・教育刑論)。

 純粋な目的刑論の立場からは、軽微な万引き犯であっても、その悪性に着目し、犯罪性が著しい者については、再犯を防止するためにきわめて厳しい刑罰で対応することも正当化される。

一般予防

 応報刑論の立場からは、犯人に応報を加えることにより、一般人もこれを戒めとし犯罪から遠ざかることとなり、刑罰は一般予防を目的とすることになる。

特別予防

 目的刑論の立場からは、犯人を刑罰によって改善することによって再犯を防止する特別予防が目的とされる。

法益保護主義・社会倫理主義

法益保護主義:生命、身体、自由、財産などの人間が有するかけがえのない利益の保護を目的とし、法益を侵害し、又は法益侵害の危険をもたらす行為を犯罪として禁止・処罰する。

社会倫理主義:社会倫理の維持を目的とし、国民が守るべき倫理を強制するために、倫理違反行為を処罰する。←(批判)社会倫理の維持・強制自体は国家の任務ではない。

 両者の違いは、処罰範囲の問題に帰結する。法益保護主義は、生命、身体、自由、財産といったかけがえのない利益(前国家的な性格を有する利益)を保護するが、社会倫理主義においては、国が定めた「国民が守るべき倫理」が保護される。

 社会倫理主義においては、保護に値しない利益を保護するために刑罰が科される可能性がある(例:健全な勤労精神の保護を目的とした「不労所得」に対する規制)。

 わいせつの罪の保護法益は、「善良な性風俗そのもの」。←(批判)一定の道徳観を国家が強制するのは権威主義的であり、現行憲法下においては故人の自由が尊重されるべき。←(反論)①わいせつの罪は、現代の社会において具体的に成立している公衆の健全な風俗を保護しようとするものであり、一定の勝ちに立脚した道徳観を強制するものではない。②処罰範囲の拡大は具体的な解釈論において防止することが可能である。

わいせつ物頒布等罪の保護法益に関する議論

・性道徳・性秩序の維持
・社会環境としての性風俗の清潔な維持
・国民の性感情の保護
・商業主義の否定
・見たくない者の権利ないし表現からの自由
・青少年の保護
・女性差別の撤廃
・性犯罪の誘発防止

刑罰を科すための責任

責任=「道義的な非難可能性」(道義的責任論)

←(理由)自由意思の存在を肯定する非決定論や刑罰の本質についての応報刑論からは、自由な意思決定に基づいて行われた犯罪行為に対する非難として責任を理解する必要がある。 

 

責任能力:①行為の違法性を弁識し(弁識能力)、②それに従って自己の行為を制御する能力(行動制御能力)

 

 責任能力の本質は、有責行為能力(自由な決定能力、違法行為を避け適法行為を選択し得る能力)と解する

←(理由)道義的責任論・規範的責任論からは、責任能力は責任非難を認めるための基礎としての意味を持つ

 

 責任判断は構成要件に該当する違法で個別的な行為についての人格的非難を内容とするものである以上、責任能力も当該行為について問題とすべきものであり、責任能力は責任要素と解する。

心神喪失

心神喪失:精神の障害により①弁識能力を欠く場合又は②行動制御能力を欠く場合

 心神喪失者の行為に対しては道義的非難を向けることができないから、心神喪失者の行為は罰せられない(39条1項)。なぜ道義的非難を向けることができないのかというと、弁識能力又は行動制御能力を欠いている場合、違法行為を避け適法行為を選択するということがそもそもできないからである。

罪刑法定主義

罪刑法定主義:法律により事前に犯罪として定められた行為についてのみ、犯罪の成立を肯定することができる。

 あえて明文の規定を必要としないが、しいて探すとすれば、憲法31条、76条6号但書、39条前段前半。

 

 罪刑法定主義は、自由主義と民主主義に基づく。

 自由主義から:自由を確保するためには、何をやったら処罰されるかをあらかじめ明確に規定しておく必要がある。

 民主主義から:刑罰は国民の生命、自由財産などの重要な人権を侵害するものであるから、刑罰を科すためには、国民の代表機関である国会の定める法律が必要となる。

 

 さらに、事前に犯罪と刑罰の内容を告知しておくことで、国民を犯罪から遠ざけるという一般予防という刑罰の目的からも、罪刑法定主義が要請される。 

拡張解釈・類推解釈

拡張解釈:処罰の対象となっている行為の概念を拡張的に画定し、その概念の中に当該事例を取り込んで、処罰範囲に含める。 

類推解釈:問題と成る行為が、罰則に寄る処罰の対象に含まれないことを認めつつ、それにもかかわらず、処罰の対象となっている行為と害悪性において同等であることを理由に、処罰の対象とする。

 類推解釈は、裁判所による(事後的)立法であり、法律主義(及び事後法の禁止)に違反して、罪刑法定主義に反し許されない。

器物損壊罪 

 器物損壊罪の「損壊」を、「効用を害する一切の行為」と解すれば(効用侵害説)、養魚池の鯉を無断で逃がす行為や食器への放尿行為について器物損壊罪の成立を正当化できる。

憲法39条と刑法6条との関係

 憲法39条では遡及処罰の禁止が定められる。

 刑法6条では、刑が軽く変更された場合は軽い刑で罰することを定める。

 刑法6条の規定は、被告人に有利な事後法の適用であり、罪刑法定主義に反するものではない。

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不明確な刑罰法規

 刑罰法規は単に法定されていればよいというわけではなく、国民に行動の予測可能性を与えられるものでなければならない。

 そうでなければ、自由主義と民主主義に立脚する罪刑法定主義の趣旨に反する(特に自由主義との関係)。

 すなわち、罰則は通常の判断能力を有する一般人の理解において刑罰の対象となる行為を識別できる程度に明確でなければならない(徳島市公安条例事件)。

以上「刑法第3版」(山口厚)参照

関連条文

責任能力

第三十九条  心神喪失者の行為は、罰しない。
2  心神耗弱者の行為は、その刑を減軽する。

第四十一条  十四歳に満たない者の行為は、罰しない。

罪刑法定主義

憲法

第三十一条  何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。

第七十三条  内閣は、他の一般行政事務の外、左の事務を行ふ。
六  この憲法及び法律の規定を実施するために、政令を制定すること。但し、政令には、特にその法律の委任がある場合を除いては、罰則を設けることができない。

第三十九条  何人も、実行の時に適法であつた行為又は既に無罪とされた行為については、刑事上の責任を問はれない。又、同一の犯罪について、重ねて刑事上の責任を問はれない。

刑法

第六条  犯罪後の法律によって刑の変更があったときは、その軽いものによる。 

わいせつ物頒布罪

第百七十五条  わいせつな文書、図画、電磁的記録に係る記録媒体その他の物を頒布し、又は公然と陳列した者は、二年以下の懲役若しくは二百五十万円以下の罰金若しくは科料に処し、又は懲役及び罰金を併科する。電気通信の送信によりわいせつな電磁的記録その他の記録を頒布した者も、同様とする。
2  有償で頒布する目的で、前項の物を所持し、又は同項の電磁的記録を保管した者も、同項と同様とする。

器物損壊罪

第二百六十一条  前三条に規定するもののほか、他人の物を損壊し、又は傷害した者は、三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金若しくは科料に処する。 

ポイント

類推解釈・拡張解釈の具体例

①目的論的解釈による拡張解釈

・ガソリンカーを転覆させ乗客を死傷に致した事案について、刑法129条にいう「汽車」をてんぷくさせた場合に当たるとした

・カルガモ等をねらいクロスボウで矢を射かけた行為につき、矢が外れたが、旧鳥獣法等が禁止する「捕獲」に当たるとした

②許されない類推解釈

・人事院規則14-7「政治的行為」5項1号にいう「特定の候補者」の中に「立候補しようとする特定人」が含まれるかが問題になった事案で、最高裁はそれを含めることは類推解釈に当たるとして否定

③争いのある場合

・文書偽造罪の客体である「文書」に文書の写真コピーも含まれるかという点につき、学説上は類推解釈に当たるとする説が有力だが、判例は一貫して文書の写真コピーも文書に含まれるとしている

暗記事項

「犯罪」の定義

犯罪:「構成要件に該当する、違法かつ有責な行為」

古典学派と近代学派の比較

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故意犯の成立要件

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徳島市公安条例事件における明確性の原則

 罰則は「常の断能力を有する般人の解において刑罰の対象となる行為を識別できる程度に明確」でなければならない

通販一理

わいせつに関する判例の定義

慾を奮又は激せしめ、つ、通人の常な恥心をし、良な義観念にするもの」

異性講師か父性聖師が、前世、同伴

罪刑法定主義の根拠条文

憲法31条、73ただし書、39

みーなさん、ロックはタダです。サンキュー!全然