BENRY[ベンリ―]

法学の予習ノート

因果関係の復習

熊うち事件

 先行行為が死因を形成し、後行行為が死期を早めたという意味では、大阪南港事件と類似の事例。

 ただし、大阪南港事件が先行行為も後行行為も故意によるものだった一方で、熊うち事件は先行行為が過失、後行行為が故意によるものである。

 また、先行行為と後行行為の実行者が、大阪南港事件では異なるが、熊うち事件では同一である。

 熊うち事件においても、まず、先行行為によって被害者が動けなくなる状態が生じており、それがなければ後行行為と死の結果もそのような形では発生していなかったことから、条件関係は肯定される。

 さらに、猟銃を発泡する行為には、強い注意義務が必要であり、対象をよく確認せずに発砲してしまと人を傷害してしまう危険性も有する行為であった。しかし、本件行為者は当該注意義務を怠って発砲してしまい、結果的に被害者の死因を形成してしまった以上、注意義務を怠って行われた発砲行為が有する危険性が被害者の死の結果に現実化したと考えられる。このことから、因果関係も肯定される。

 また、前述のように注意義務を怠るという過失があったことから、主観的構成要件にも合致し、本来、本件行為者には過失致死罪が成立すべきである。

 しかし、一方で、後行行為と死の結果との因果関係も肯定される以上、本件作為者には、殺人罪も成立する。

 ここで、過失致死罪と殺人罪を作為者に成立させてしまうと、被害者の死を二重評価してしまうこととなるから、あえて先行行為と結果との間の因果関係は否定し、過失致傷罪と殺人罪の併合罪が成立すると判例は考えている

老女布団蒸し事件

 実行行為は、強盗に伴う暴行。

 結果は、被害者の急性心臓死。

 介在事情は、被害者の心臓の病的素因(極めて軽微な外因によって、突然心臓昨日の障害を起こして心臓死にいたるような心臓疾患)

 判例は、危険の現実化を考える上で、行為時に存在していたすべての事情を判断基底としている。

 そこで、病的素因の存在を前提に、本件暴行は、被害者の急性心臓死を引き起こす危険性を有しており、その危険が結果に現実化したと言える。

 したがって、因果関係が肯定される。

設問

 実行行為は、背中を蹴飛ばし、さらにその頭髪を掴んで後頭部を打ち付けるなどの暴行。

 結果は、被害者の急性循環不全による死亡。

 介在事情は、①被害者の全力疾走、②被害者の冠状動脈の先天的な異常。

 まず、判例の立つ客観説的な危険の現実化においては、行為時に存在していたすべての事情を前提とするため、②冠状動脈の先天的な異常も判断基底に含めてよい。

 その前提で考えると、まず、①被害者の全力疾走については、行為者の暴行によって惹起されたものと言える。というのも、本件においては加療1週間程度の軽傷を与えるにすぎなかったが、普段から激しい暴力を振るうこともあり、また、行為者が興奮しやすいことから、そのままその場にいたら更に酷い暴行が加えられ生命にも危険が及ぶと被害者が考えた結果、全力疾走をするに至ったからである。

 そして、被害者が一定の距離を全力疾走するということは、被害者の冠状動脈の先天的な異常により急性循環不全によって被害者を死亡させる蓋然性を有していた。

 以上のように考えると、本件行為者の行った暴行は、被害者をその場から逃走させ、その逃走の過程で冠状動脈の先天的な以上により急性循環不全を引き起こし被害者を死亡させる危険性を有しており、当該危険性が結果に現実化したと言える。

 以上から、本件暴行行為と被害者の死亡との結果との間に因果関係は認められる