BENRY[ベンリ―]

法学の予習ノート

違法性阻却

正当防衛と緊急避難

正当防衛の成立要件は、行為無価値論的立場からは、

①急迫不正の侵害

②自己又は他人の権利

③防衛の意思

④必要性・相当性(やむを得ずにした行為)

 

緊急避難の成立要件は、行為無価値論的立場からは、

①現在の危難

②避難の意思

③補充性(やむを得ずにした行為)

④法益の権衡

 

が要求される。

 正当防衛においては、不正の侵害である必要があるが、緊急避難については正の侵害についても認められうる。

 ただし、その性質上、緊急避難の場合は、補充正及び法益の権衡が必要とされ成立範囲が狭められている

 

対物防衛

 対物防衛とは、犬などの物による侵害行為に対して正当防衛が認められるかという問題である。

 違法を法益侵害ととらえる結果無価値論からは、物による侵害も「不正」の侵害と考えられることから、対物防衛は当然に認められる。

 一方、違法を、法益侵害だけでなく行為規範からの逸脱としてとらえる行為無価値論からは、物による侵害は「行為」ではない以上、対物防衛は認めにくい。しかし、行為無価値論に立った上で、「不正」を一般的法秩序における違法と解して対物防衛を肯定する見解もある。

 600円の犬を守るために150円の犬を殺した事案においては、大審院は緊急避難に該当すると判断しているが、これは犬による侵害を不正の侵害ととらえなかった、行為無価値論の立場によるものである

侵害の急迫性

①予想される将来の侵害については、急迫性を認めることができない

②窃盗犯人が奪取行為の直後に逃走しているのを被害者が発見した場合は、窃盗が状態犯であるとはいえ、いまだ窃盗の機会であり、急迫性を認めることができる

③財物を盗まれてから3日後に犯人を突き止めた場合は、違法状態は継続しているものの、侵害事態が差し迫っているわけではないため、急迫性を認めることができない

積極的加害意思

 積極的加害意思がある場合、正当防衛の成立要件である防衛の意思を欠くため(急迫性を欠くため、正当防衛は成立しない。

 防具ではなく武具を携えていけば、積極的加害意志が推認されるのではないか。

 最決昭52.7.21についても、相手の攻撃を当然に予想しながら、単なる防衛の意思ではなく積極的加害意思をもって臨んだとして、正当防衛の成立について否定している。

自招侵害

 自招侵害とは、被害者の先行行為が、加害者の後行行為を誘発するケースである。それに対して被害者が行った防衛行為に正当防衛が認められるかが問題となる。

 最決平成20.5.20は、先行行為によって誘発されることが予想される程度の侵害を、加害者が行った場合には、急迫性を超えるものではないとして、正当防衛の成立を否定している

防衛の意思

判例は、正当防衛の成立に防衛の意思が必要と解している

最判昭46.11.16

 一度身の危険を感じ、外に出たXが、仲直りしようと思って旅館に戻ったところ、Aに暴行されたために逆上し、殺意をもって小刀を突き刺してAを殺害した事案

「刑法36条の防衛行為は、防衛の意思をもってなされることが必要である」

「相手の加害行為に対し憤激又は逆上して反撃を加えたからと言って、ただちに防衛の意思を欠くものと解すべきではない

「かねてから被告人がAに対し憎悪の念を持ち攻撃を受けたのに乗じ積極的な加害行為に出たなどの特別な事情が認められないかぎり、被告人の反撃行為は防衛の意思をもってなされたものと認めるのが相当である」

 

最判昭50.11.28

 Bらに因縁をつけられた被告人をQ方付近まで送り届けたが、下車するとBらは被告人の友人Aに飛びかかり暴行を加えたため、Aを助け出そうとして自宅から散弾銃を持ってきた。戻ってきたところBらを見つけることはできなかったが、付近を捜索中、Bの妻を見つけたため同女の腕を引っ張ったところ叫び声をあげ、これを聞いて駆けつけたBが追いかけてきた。Bは逃げたが、追いつかれそうになった時点でBに発砲し、加療4ヶ月の傷害を負わせた。

急迫不正の侵害に対し自己又は他人の権利を防衛するためにした行為と認められる限り、その行為は、同時に侵害者に対する攻撃的な意思に出たものであっても、正当防衛のためにした行為にあたると判断するのが、相当である」

防衛の名に借りて侵害者に対し積極的に攻撃を加える行為は、防衛の意思を欠く結果、正当防衛のための行為と認めることはできないが、防衛の意思と攻撃の意思とが併存している場合の行為は、防衛の意思を欠くものではないので、これを正当防衛のための行為と評価することができる」

 

 防衛の認識があったとしても、攻撃を受けたのに乗じ積極的な加害行為に出た場合や、防衛の名に借りて侵害者に対し積極的に攻撃を加える場合は、防衛の意思が認められないこともある。

 

防衛の意思必要説

 防衛行為であるためには、客観的に防衛行為としての性質を有しているだけでなく、防衛の意思でその行為がなされなければならない

 ※刑法における行為は、主観的要素と客観的要素から成立する(法益侵害だけでなく、規範からの逸脱も考慮)

 ※明らかに犯罪意図をもって反撃行為をした場合に正当防衛を認めるとすれば、法の自己保全という正当防衛の趣旨に反する

 ※36条1項の「ため」という文言

防衛の意思不要説

 防衛行為であるためには、客観的に防衛行為としての性質を有していれば良い

 防衛行為にあたるかは客観的に判断されることになるが、意図的な過剰行為は、過剰防衛として正当防衛から排除される

 過剰防衛であるとしても、刑の減免を行わないことにより対処することが可能

 ※結果無価値を徹底すると、主観的事情は違法性には一切影響しない(法益侵害のみを考慮)