BENRY[ベンリ―]

法学の予習ノート

正当防衛・緊急避難

36条1項の「やむを得ずにした行為」

最判昭44.12.4

「急迫不正の侵害に対する反撃行為が、自己又は他人の権利を防衛する手段として必要最小限度

すなわち、

反撃行為が侵害に対する防衛手段として相当性を有するものであること」

 

「やむを得ずにした行為」に関する判例

包丁を手にした脅迫の判例(最判平元.11.13)

「危害を避けるための防御的な行動に終始していたものであるから、その行為をもって防衛手段としての相当性の範囲を超えたものということはできない」

急迫不正の侵害が終了していないとされた事例(最判平9.6.16) 

①「同人の被告人に対する加害の意欲は、旺盛かつ強固であり……存続していた」

②「間もなく体制を立て直した上、被告人に追いつき、再度の攻撃に及ぶことが可能であった」

→「急迫不正の侵害は……継続していた」

「同人の急迫不正の侵害及び被告人の防衛の意思はいずれも存していた」

ただし、

「攻撃力はかなり減弱していた」一方で、「片足を持ち上げて……転落させた行為は、一歩間違えばどう人の死亡の結果すら発生しかねない危険なものであった」から、

「鉄パイプで同人の頭部を1解殴打した行為を含む被告人の一連の暴行は、全体として防衛のためにやむを得ない程度を超えたものであった」

 

夜道で襲われた女性が、身を守るためには石で殴りつけて致命傷を与えるしかなかった場合

 必要最小限度性は、当該具体的状況の下において、可能な防衛手段の選択肢及びその使用態様を考慮した上で、具体的に判断される必要があるから、力の弱い女性が道具を使わずに加害者から身を守ることはできず、侵害から身を守るためには石を相手の頭部に振り下ろして致命傷を与える行為が唯一の手段であった以上、相当性が認められる

 

過剰防衛

防衛行為が「防衛の程度を超えた」場合。

①質的過剰 急迫不正の侵害に対して必要な程度を超えて法益侵害を生じさせた場合
②量的過剰 急迫不正の侵害が終了した後も、反撃行為を継続する場合

過剰防衛の任意的減免の根拠

①責任減少説

 急迫不正の侵害に直面した緊急事態において恐怖・狼狽から多少の行き過ぎ行為をすることはやむを得ず、避難可能性(責任)が減少している

②違法減少説

 法益侵害に対する防衛行為がなされているから違法性が減少している

③違法・責任減少説

 ①②の合体

最決平20.6.25

「その間には断絶があるというべきであって、急迫不正の侵害に対して反撃を継続するうちに、その反撃が量的に過剰になったものとは認められない」

 第1暴行と第2暴行を分断して考えた上で、急迫性が存在せず専ら攻撃の意思に基づいて第2暴行に及んでいることから、第2暴行について、正当防衛も過剰防衛も成立せず、傷害罪が成立する

37条1項の緊急避難の性質

①違法性阻却事由説

 実質的違法阻却原理としての同等利益・優越的利益の保護を法定したもの

②責任阻却事由説

 侵害を無関係の他人に転嫁することは正当化できない。

③二元説

 ①②

同価値の場合に緊急避難を認めることができるか

 37条1項でそう書いてあるから認められる(政策的判断に基づく?)

タイタニックのラストシーン(カルネアデスの板)

 どちらも同価値であるとすれば、緊急避難が認められるのではないか

適法な逮捕に対し、警察官を殴って逃走する行為

 相手が正当行為である以上、保護すべき法益の価値が失われ、違法性が阻却されることはない

37条1項の「やむを得ずにした行為」

補充性:危難回避のため、より侵害性の低い行為が他に存在しないこと

設問の例においては、成立しない

 

高級スーツを着ている人が、大雨に合ったため、安いスーツを着ている人から傘を奪うことが認められるか(ただし補充性の要件は満たす)

 この場合、緊急避難は成立しないとも思われる。

 傘はスーツを守るためのものだけではなく、使用者の健康という身体的利益等も守るものであり、スーツだけで比較すべきものではないがそうだとしても、身体VS身体で同等であれば、緊急避難は成立してしまう。

 避難行為の相当性の議論?

 保全法益が高級スーツだけであり、侵害法益が安いスーツ+身体的利益であると考えれば、緊急避難を否定することもできるのでは?

※そもそも、雨によってスーツが台無しになる可能性がないともいえるが、これについては誤想避難の問題となりうる。

 

緊急避難における「害の衡量」

保全法益と侵害法益との比較衡量


生命>身体>自由>財産

 

・法益の序列を抽象的に比較するのではなく、個別状況における法益侵害の量、程度、
危険性などを考慮した衡量がなされる必要がある。