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BENRY[ベンリ―]

法学の予習ノート

錯誤の復習

被害者の近くに人がいた場合

Aに関して

Xは殺意をもってAに拳銃を発砲し、意図したとおりAに弾丸が命中して死亡させていることから、Aに対する殺人罪が成立する

Bに関して

 Aの近くにいたBに対して、弾丸が命中する危険性はあったものの、実際には当たっていない。この場合、「人」に対して拳銃を発砲し、当たる危険性を生じさせている以上、殺人未遂罪が成立するとも考えられる。

 Bが存在していることをXが認識した上で、Bが死んでも構わないという意図の下で行ったのであれば、殺人未遂罪が成立する。

 一方、Bが存在していたことを知らなかった場合について、どうするかが問題。

 抽象的法定符号説からは、殺人未遂罪を成立させていいようにも思える(その場合は、殺人罪と殺人未遂罪との観念的競合)。

 しかし、結果が発生していない以上、故意の問題を論ずるまでもなく犯罪不成立にすべきか…。

正当防衛の意思で第三者に傷害を負わせた場合

 第三者との関係で見た場合、Xの行為は傷害罪の客観的構成要件に該当し、また、「人」に対して投げている以上、抽象的法定符号説の立場から、主観的構成要件にも該当する。

 さらに、客観的に評価した場合、第三者Aは侵害行為をしていないため、正当防衛によって違法性も阻却されない。

 しかし、Xはあくまでも、Yによる侵害に対して相当な手段で防衛行為をする意思で石をなげたものであるから、責任故意がなく、責任が阻却され不可罰(いわゆる誤想防衛)。

 過失があれば過失致傷。

砂浜放置(ウェーバーの概括的故意)

 先行行為が後行行為を惹起したものであり、先行行為が有していた危険性が後行行為を経て結果に現実化したと言えることから、因果関係は肯定される。

 いわゆる方法の錯誤(因果関係の錯誤)であり、実際に発生した因果経過を認識していないことから、故意が阻却されるかを検討する必要がある。

 本件においては、殺人という同一の構成要件内で因果関係にズレが生じているだけだから、故意を阻却しない。

 したがってXの行為は殺人罪の構成要件に該当し、違法性も責任も阻却されないことから、殺人罪が成立する

毒薬準備

 ウイスキーの瓶に毒を混入させて準備していただけでは、殺人罪の実行の着手があったということはできない。

 殺人予備罪の成立にとどまる。

 保管方法に過失があったとして、過失致死罪の成立はありうるか。

自分の子どもを死んだと誤信して山中に遺棄した結果死亡

 死体遺棄罪(190条)の故意で、保護責任者遺棄致死罪(219条、218条)の実行行為を行っている。

 38条2項により、保護責任者遺棄致死罪で処罰することはできない。

 一方、故意責任の本質は、規範に直面して反対動機の形成が可能であったにもかかわらずあえて実行行為に及んだことに対する避難であり、刑法上の規範は構成要件の形で一般国民に与えられていることから、実現された構成要件該当事実の認識があってはじめて、故意非難が可能となる。したがって、構成要件を異にする抽象的事実の錯誤は、原則として故意が阻却されるが、認識事実と実現事実の構成要件が同質的で重なり合う場合には、例外的に故意は阻却されない(法定的符号説)。

 そして、構成要件の重なり合いは、①保護法益の共通性、行為態様の共通性を基準に、実質的な重なり合いを検討すべきである(実質的符号説)

 これを本件についてみると、死体遺棄罪の保護法益は社会的法益であり、保護責任者遺棄致死罪の保護法益は被害者の生命・身体であることから、構成要件がかさなりあっているということはできず、故意を認めることはできない。

 したがって、客観的構成要件を欠くことから不可罰。

既に死んでいる被害者を、まだ生きていると誤信して遺棄した場合

 この場合、死んでいる被害者を「遺棄」しても、保護責任者遺棄致死罪の実行行為をすることはできない。

 そこで、死体遺棄罪の成立が問題となるが、保護責任者遺棄の故意で死体遺棄を行っている以上、上と同様に構成要件的故意の存否が問題となり、法定的符号説(実質的符号説)の立場からは、故意を認めることができず、不可罰となる。

関連条文

(故意)
第三十八条第二項

 重い罪に当たるべき行為をしたのに、行為の時にその重い罪に当たることとなる事実を知らなかった者は、その重い罪によって処断することはできない。

(死体損壊等)
第百九十条  死体、遺骨、遺髪又は棺に納めてある物を損壊し、遺棄し、又は領得した者は、三年以下の懲役に処する。

(保護責任者遺棄等)
第二百十八条  老年者、幼年者、身体障害者又は病者を保護する責任のある者がこれらの者を遺棄し、又はその生存に必要な保護をしなかったときは、三月以上五年以下の懲役に処する。
(遺棄等致死傷)
第二百十九条  前二条の罪を犯し、よって人を死傷させた者は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断する。

(傷害)
第二百四条  人の身体を傷害した者は、十五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。