BENRY[ベンリ―]

法学の予習ノート

共犯の復習

被教唆者が刺す相手を間違えた

 被教唆者Yは殺人罪の客観的構成要件に該当する行為を行ったが、客観的事実と認識にズレがあるため故意の存否が問題となる。しかし、およそ「人」を殺害しようとしてBという人を殺害している以上、故意も認められ、殺人罪が成立する。

 教唆者Xは殺人罪の教唆犯の客観的構成要件に該当する行為を行ったが、客観的事実と認識にズレがあるため故意の存否が問題となる。しかし、およそ「人」を殺害する教唆しようとして非教唆者YがBという人を殺害している以上、故意も認められ、殺人罪の教唆犯が成立する。

窃盗を教唆したのに、被教唆者が強盗を行った場合

 被教唆者Yは強盗の実行行為を行い、それについての認識もあることから構成要件該当性が認められ、違法性阻却事由がなく、責任阻却自由もないため、強盗罪が成立する。

 教唆者Xは、窃盗の教唆を行ったにもかかわらず被教唆者Yが強盗の実行行為を行っており、教唆内容と被教唆者の行為にズレが生じている。この点、共犯の処罰根拠は共同して犯罪結果を惹起することであり、Xの教唆がYの強盗を引き起こしたという因果性があり、また、窃盗と強盗は保護法益が財物で共通しており、行為態様も所有者の意思に反してその占有を奪う行為であることから共通しているため、構成要件の重なり合う窃盗の範囲で教唆犯が成立する。

毒を渡された看護師が気付いたのに打ったケース

 Yは自己の意思で殺人の実行行為を行っていることから、Yに殺人罪が成立する。

 つぎにXについて考える。

 まず、殺人罪の間接正犯が成立するか。

 この点、間接正犯は利用行為を実行行為と見るところ、被利用者であるYは毒物であることに気がついており、反対動機形成可能性があったため、道具として利用されたということはできず、間接正犯は成立しない。

 それでは、Xに殺人罪の共同正犯が成立するか。

 共同正犯の成立には因果性と正犯性が必要となるところ、看護師Yに医師Xは毒薬を渡していてその毒薬が実際に使われて殺人の実行行為が行われたため因果性はある。また、意思と看護師といういわば上下関係にあり、重要な影響を有していたということができるから重大な影響を有していたということができるため、正犯性がある(※暴行等はないため、重大な影響とまでは言えないかもしれないが、言えることにする)。

 したがって、Xには殺人罪の共同正犯が成立する。

大阪南港事件の応用(承継的共同正犯的)

 まず、Xに何の罪責について。

 頭部に激しい暴行を加えたという事情程度では殺意は認定することができないように思われることから、傷害致死罪の成否を検討する。

 この点、Xが傷害の故意で傷害の実行行為を行っており結果が発生していることから傷害罪が成立することは明らかである。

 しかし、Xの第1暴行後、Yによる第2暴行が行われていることから、Aの死亡結果をXに帰責させることが可能であるか、因果関係の存否が問題となる。

 この点、実行行為は犯罪結果の具体的危険性のある行為であることから、実行行為の有する危険性が結果に現実化したのであれば、因果関係を認めるべきであると考える。

 そうであるとすれば、本件においてAの死因となる傷害は、もっぱらXの第1暴行によって形成されたものであることから、Yによる第2暴行が行われたとしてもなお、Xの第1暴行の有した危険性がAの死という結果に現実化したということができる。

 したがって、Xの暴行とAの死亡に因果関係があると考えられる。

 よって、結果的加重犯の成立に際しては加重結果に関する認識は不要で、実行行為と結果との間に因果関係があれば結果的加重犯の罪責を負うことになるから、Xには傷害致死罪が成立する。なお、違法性阻却事由も責任阻却事由もない。

 

 次に、Yの罪責について

 Yは、傷害の故意で傷害行為を行い、Aに肋骨骨折を生じさせていることから、傷害罪の構成要件に該当し、違法性阻却事由もなく、責任阻却事由もない。

 それでは、傷害致死罪の罪責を負うか。承継的共同正犯の成否が問題となる。

 そもそも、共同正犯が成立するか。

 この点、共同正犯は、複数人が共同して犯罪結果を惹起する類型であるところ、第1暴行によってAが無抵抗の状態になっていることを利用してYが暴行を行っている以上、傷害罪の共同正犯となる。

 ただし、この点、先行者が行った行為の結果について、途中から加わった共犯者の行為が因果関係を有することはありえないから、Xが形成した死因によってAが死亡しているということのみが前提となるのであれば、Yの暴行とAの死亡との間に因果関係を認めることはできないことから、Yは傷害致死罪の共同正犯の罪責を負わない。

※なお、Yの暴行によってAの死期を早めたということが立証されるのであれば、それについてYの暴行とAの死亡との間に因果関係が認められることから、傷害致死罪が成立する。

共犯からの離脱

 共同正犯とは、共謀に基づいて、相互の意思決定に重大な影響を与えながら、共同して構成要件を実現する類型である。そうであるとすれば、実行行為を分担していなくても、共謀に基づいて、重要な影響を及ぼしていると言えるのであれば、共同正犯が成立する。

 本件において、Xが主導してYZとA殺害の共謀を遂げている。

 当該共謀に基づいてXZ両名でAを殺害している以上、XZには殺人の共同正犯が成立する。

 それでは、Yに殺人罪の共同正犯が成立するか。Yはその後殺害の意欲を失い、関係者と連絡を絶ち、そのまま行方不明になっていることから、共犯からの離脱が問題となる。

 この点、共同正犯の処罰根拠は、構成要件の実現につき因果性と正犯性があるものにつき正犯の刑を科す点にあるところ、因果性が消滅しているかが問題となる。

 本件において、Yは凶器の供与などは行っておらず、物理的因果性はそもそもない。

 一方、Xがリーダーであったとはいえ、XYZが一緒になって共謀していることから、YはXZの犯行を促進し、心理的因果性を有する関係にあったということができる。

 本件において、Yは連絡を絶って立ち去るのみで、何ら心理的因果性を解消する行為を行っていないことから、いまだ因果性があり、Yも殺人罪の共同正犯の罪責を負うと考えられる。

一応とめようとしたが一蹴された場合

 また、本件において、離脱したのがリーダー格のXであり、XがYZに犯行の中止を呼びかけたが一蹴されYZにより犯行が実行された場合にはどうなるか。

 その場合、YZに殺人の共同正犯が成立することは明らかである。

 一方、Xについては犯罪の中止を呼びかけたが、それはYZによって一蹴されており、そもそもリーダー格としてYZの犯行を促進したという心理的因果性を解消することができていない。

 したがって、Xは殺人罪の共同正犯の罪責を負う。

罪数処理

傷害と器物損壊

 傷害罪が成立する。

 他方、器物損壊罪が成立するかは、故意の観点から微妙ではある。

 器物損壊罪が成立するとしても、傷害に伴ってその人の所有物が壊れることは通常随伴する行為であることから、器物損壊は傷害に吸収される(? ナイフを用いた殺人で、その人の衣服を切り裂くものは吸収関係にあるとされるが、果たして傷害の場合も同様に考えていいものか)

窃盗後の器物損壊

 窃盗罪が成立する。

 一方、窃盗罪は状態犯であり、その後窃取した財物を処分することは、窃盗の構成要件的行為によって当然に予定されているものと考えられるから、その後の投げ捨てた行為については、不可罰的事後行為となると考えられる。

詐欺罪と2項強盗

 時間的場所的に1つの行為としてみることができず、併合罪となる。

同じ人を3回刺す

 断続的に3回、同一人に対し、その末端部分である腕や脚を刺していることから、連続犯として傷害罪の包括一罪となる。