BENRY[ベンリ―]

法学の予習ノート

公訴の提起

検察官の訴追裁量権

日本の刑訴法は、「第二百四十八条 犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により訴追を必要としないときは、公訴を提起しないことができる。」となっており、たとえ事実に関する十分な根拠が存在するとしても、検察官が公訴を提起しないことができる旨が規定されている

一罪の一部起訴

 検察官に公訴提起の判断があり、起訴便宜主義がとられている以上、一部起訴も許されると解するべきである。もっとも、実体法上一罪となるような犯罪について、被告人に不利な形で一部起訴をすることは許されない。なぜならば、それはまとめて起訴をした場合よりも、結果的に刑が長期に渡る可能性があり、刑法で定められた刑期の定めを潜脱するものとなり罪刑法定主義に反するものとなりうるからである。

 というのも、たとえばかすがい現象がある場合にその一部だけを起訴すると、本来の量刑よりも重くなってしまう。

 本件は住居侵入と窃盗であって牽連犯の関係に立つものであるが、牽連犯についてはそれぞれの刑期のうち最も重い刑により処断することになっている。これを別々に起訴すると、合計した刑期が牽連犯の場合の刑期よりも長くなってしまう可能性もあるが、本件起訴自体は直接的に被告人に不利益を及ぼすものではなく、許されるものであるように思われる。

 構成要件がズレなければ原則としていいけれど、そうでなければダメでは?

 以上とは異なり、もしこの起訴が違法であるとした場合、公訴棄却にすべしという見解が通説だが、検察官に対し旧釈明をするとともに、判明した事実にそう形で訴因変更の勧告や命令を行うということも考えられる

検察官の訴追裁量権に対するコントロール

 ①検察審査会、②付審判請求、③上級検察庁への不服申立て

芦別国家賠償請求事件(最判昭53.10.20)

無罪判決確定の場合

 無罪の判決が確定したからといって、公訴の提起は常に違法であったことにはならない。Xの主張するように考えると、検察官に裁判官と同様の判断が求められることとなり、当事者主義がとられ対審構造がとられていることに反するし、望ましくないように思われる。

判決の結論

 起訴時あるいは公訴追行時における証拠資料を総合勘案して合理的な判断過程により有罪と認められる嫌疑があれば足りるものである。裁判官が有罪判決を言い渡すためには、合理的な疑いを超える証明が必要であるが、これは刑罰という重大な不利益を被告人に確定的に課すことになるからである。他方で、検察官による公訴提起、訴訟追行は確定的に刑罰を課すものではないことから、合理的な疑いを超える証明という高度の心証までは不要であるものと考えられる。

十分な嫌疑がない場合

 十分な嫌疑なしに公訴を提起した場合、それは検察官の裁量を逸脱して違法となる(アルマp.178)

 その場合、非類型的な訴訟条件が欠缺したとして公訴棄却されるべきである

 公訴棄却は、冒頭手続の段階においてするべきである。被告人が不当な訴訟に拘束されるのを防ぐため。無罪判決にするためには審理を行わなければならず、被告人を不当に拘束することになるから、公訴棄却の方が望ましい

最判昭27.3.5

刑訴法256条6項の趣旨

 裁判官が、あらかじめ事件についてなんらの先入的心証を抱くことなく、白紙の状態において、第1回の公判期日に望み、その後の審理の進行に従い、証拠によって事案の真相を明らかにし、もって構成な判決に到達するという手続の段階を示したもの

 直接心理主義及び公判中心主義の精神を実現するとともに裁判官の構成を訴訟手続条より確保し、よって衡平な裁判所の性格を客観的にも保証しようとする重要な目的をもっている

問題となった記載

 「被告人は詐欺罪により既に2回処罰を受けたものであるが」という、前科の記載。

 最判昭33.5.20においては、被告人が被害者あてに発送した内容証明郵便文書の内容。

 両者の違いは、それが、公判において明らかにすべき事実であるか否かということ。前者は違うが、後者はそう。また、後者は、添付に代えて引用しているものだが、前者は違う。

 本件の記載は、256条6項の文言には直接当てはまらないのではないか。

 後者の記載は、あてはまる

 以上に照らすと、両者の判決は矛盾しているように思える

同種前科の記載が許される場合

累犯加重

 許される。犯罪構成要件の一部となるから

常習性を示す同種前科

 許される。犯罪構成要件の一部となるから

常習累犯窃盗

 許される。犯罪構成要件の一部となるから

詐欺罪の公訴事実

 「被告人は、窃盗罪及び業務上横領罪により既に2度処罰を受けたものであるが」と記載することは許されない

悪性格

 暴力団組員としての経歴や、怠惰な性格というのは、いずれも悪性格に関するものであり、本来、悪性格から犯罪事実を推認することは弱い推認であって許されないものである。そして、公判においても証拠とすべきでない事項について、起訴状に記載することは許されないものと考える