民事訴訟手続きの復習
東京地判平成13.3.27
訴状の記載
請求の趣旨
1 Yは、Xに対し、318万円5107円及びうち315万4000円に対する平成9年8月16日から支払い済みまで年3割の割合による金員を支払え。
2 訴訟費用はYの負担とする
との判決及び仮執行宣言を求める
請求の原因
・返還約束
・金銭の交付
・履行期の合意
・履行期の経過
・利息の合意
訴訟物
消費貸借契約に基づく貸金返還請求
請求原因事実
・返還約束
・金銭の交付
・履行期の合意
・履行期の経過
・利息の合意
手続経過
Xが裁判所に訴状を提出し、裁判所がYの支配人としてのAに訴状を送達して、Yに訴訟を提起。
→AはYの支配人として出席し(会社法11条)、請求を認諾。
→Yは認諾調書の執行力の排除を求めて請求異議の訴え(Aは既に支配人ではなかったから、その訴訟行為の効果がYに帰属しない。したがって、)
→認容。執行力喪失
→Xが期日指定の申立てを行って、審理が再開。
請求異議の訴え
(請求異議の訴え)
第三十五条 債務名義(第二十二条第二号又は第三号の二から第四号までに掲げる債務名義で確定前のものを除く。以下この項において同じ。)に係る請求権の存在又は内容について異議のある債務者は、その債務名義による強制執行の不許を求めるために、請求異議の訴えを提起することができる。裁判以外の債務名義の成立について異議のある債務者も、同様とする。
2 確定判決についての異議の事由は、口頭弁論の終結後に生じたものに限る。
3 第三十三条第二項及び前条第二項の規定は、第一項の訴えについて準用する。
弁論の再開を求めたのは
X。金銭の支払いを求めるため。訴訟費用の節約? Aに送ったのに、Yが応訴してくれている??(瑕疵の治癒)
判決の結論
本件訴えは訴権を乱用するものであるから、不適法なものとして却下。
Xの行為は、裁判所を欺いて債務名義を詐取するに等しく、また、訴訟手続を不正に利用してYに不利益を与えたことが、訴訟上の信義則に反する
本件訴訟における「訴権の濫用」という規律の異議
訴権の濫用を理由に訴えを却下しなかった場合
本案審理に入り、おそらく請求棄却されていたと考えられる(p.10(3)(ア)参照)
却下と請求棄却の違い
既判力の範囲
訴え却下の意味
(信義則に基づき)訴訟要件を満たさないとする部分について既判力が生じる。同一の請求を立ててした場合も、同様に却下されると考えられる。
訴権の濫用というルールの意義
「訴権の濫用」というルールの存在理由
司法資源の適正利用、有効利用、経済性。
司法への信頼確保。
誰に対する関係か
本件では、裁判所に対する関係と被告との関係と両方を述べている。
信義則に反するような訴権の利用が、訴権の濫用と評価される。
最判昭63.1.26
損害賠償が認められるための要件
「訴訟に置いて提訴者の主張した権利又は法律案系が事実的、法律的根拠を欠くものであるうえ、提訴者が、そのことを知りながら又は通常人であれば容易にそのことを知り得たといえるのにあえて訴えを提起したなど、訴えの提起が裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くと認められるとき」
本件においては、後者の、知っていた、又は容易に知り得たというところを欠くため、著しく相当性を欠くとは言えないとした。
弁護士としての対応
訴権の濫用で却下を求める応訴をするとともに、損害賠償請求の反訴を提起する